意外と知らない? トロピカルフルーツ マンゴーのこと
マンゴーは、インド~インドシナ半島を原生地とする熱帯果樹(トロピカルフルーツ)です。
世界各地で栽培されており、現在では世界で600品種以上のマンゴーが育てられているといわれています。
昨今では日本国内でも栽培が普及し、スーパーやデパートなどで目にする機会も増えてきました。
トロピカルフルーツの代表格のようなマンゴー。いったいどのようなフルーツなのでしょうか。
日本でも栽培されるマンゴー
マンゴー栽培の歴史は古く、紀元前2000年、つまり今から4000年前にはインドで栽培が始まっていたといわれています。
お釈迦さまが教えを説いた場所として、仏典にはマンゴーの樹がたびたび登場します。また、ヒンドゥー教では万物の創造神「プラジャーパティ」の化身とされ、儀式にもマンゴーの葉でつくった葉飾りが使われるなど、古くから神聖視されてきました。
熱帯地方を原生地とするマンゴーですが、昨今、日本でも沖縄や宮崎などあたたかい地域を中心にマンゴーの栽培が広がっています。
日本では1970年代から栽培が開始されましたが、気候も違ううえ、栽培のノウハウもまったくない状況からのスタートでした。
病気や結実率の低さなどを克服する必要があり、栽培方法の確立までには多大な苦労があったようです。
数多くの品種があるマンゴーですが、国内で栽培されているマンゴーのほとんどは「アーウィン種(アップルマンゴー)」とよばれる品種です。
アーウィン種は、赤い果皮とオレンジ色の果肉、中心部に平たく大きな種子を1つだけもった400gほどの果実をつけます。繊維質が少なくジューシーで糖度も高い人気を誇ります。
日本では、アーウィン種のほかにも、キーツ種や金蜜、金煌、玉文など何種類かのマンゴーが栽培されています。
たとえば、アーウィン種に次いで生産量の多いキーツ種は、熟しても果皮は緑色のままで「グリーンマンゴー(緑のマンゴー)」ともよばれています。キーツ種の果実は500g~2kgにもなり、黄色~オレンジ色の果肉は濃厚な味わいで、しっかりした甘みとほのかな酸味をもっています。
白くて小さなマンゴーの花
マンゴーは熱帯地方を原生地としているので、気候が違う日本ではハウスを使ったハウス栽培で育てられます。
本来は樹高30m~50mにもなりますが、ハウスで栽培されるマンゴーは高さが1m~1.5mほどになるようにせん定されています。
マンゴーが花を咲かせるのは1年に1回だけ。地域にもよりますが、1月~3月あたりです。
花が咲く季節になると、緑色の葉っぱが生い茂るマンゴーの樹の先端から、枝のような赤色の軸が伸びてきます。
この赤色の軸は枝分かれしながら数十cmほどの長さに伸び、そこに直径1cmくらいの白く小さな花をたくさん咲かせます。
小さな花は集まって房状になっており、その数は数百~千以上。開花の季節になると、無数の小さな花がハウスの中に咲きます。
たくさん集まって穂のように咲く花は「花穂(かすい)」とよばれ、厳密には少し種類が違いますが、ブドウやクリ、イネなどにもみられるものです。
小さく無数の花を咲かせるというのは、ずっしり大きなマンゴー果実の姿からすると意外かもしれません。
虫の力を借りて受粉
たくさんの花を咲かせるマンゴーは、受粉に昆虫の力を借りています。
じつは、マンゴーの花からはかなり強烈な腐敗臭がするのですが、それはマンゴーの原生地である熱帯地方ではハエが花粉の運び手となるからです。
熱帯地方は気温が高すぎるため、花粉の運び手としておなじみのミツバチが活動できません。
そのためマンゴーは花粉の運び手としてハエを選び、花は腐敗臭でハエを引き寄せ、花粉を運んでもらっているわけです。
マンゴーの花の腐敗臭は、熱帯地方を原生地とするマンゴーの生存戦力といえるでしょう。
日本ではミツバチが活動できますが、マンゴーの花からはやはり強い腐敗臭がします。
日本のマンゴー栽培では、花の受粉に、ミツバチを利用して花粉を運んでもらっている農家さんもありますし、原生する熱帯地方と同じようにハエを利用して花粉を運んでもらっている農家さんもあります。
大きくておいしい果実に
花を咲かせるのは1年に1回だけなので、果実の収穫も1年に1度だけです。
1つ1つの花穂にたくさんの花を咲かせるマンゴーですが、受粉・結実するものの数は少なく、1つの花穂あたり多くても数個しか結実しません。
そして、せっかく結実した果実も、複数あると栄養が分散してしまうので大きくなりません。
そのため栽培されるマンゴーでは、大きくておいしい果実が育つように、果実がまだ小さいうちに果樹1本ずつバランスをみながら1つの枝に1個~2個になるよう選別が行われます。
選別が終わったマンゴーは、栄養をたっぷり吸収してどんどん大きくなっていきます。
マンゴーの果実は大きくなると重すぎて枝が折れてしまうので、ハウスの天井から伸ばしたひもに結ばれ、天井から吊るようにします。
開花してから4か月ほど経つと、マンゴーの果実は十分に大きく育ち、収穫をむかえます。
世界中の人々に愛されるマンゴー
マンゴーは世界中の人を魅了するトロピカルフルーツです。
紀元前からの歴史をもち、世界で数多くの品種が栽培されています。
日本のマンゴーの国内生産量は年間3000トン、輸入量は8500トンにのぼります。
国内栽培のものだけでなく世界から輸入されたさまざまな品種のマンゴーたちが流通していて、見た目も味もじつに多様です。
4000年以上前から栽培され、世界中で育てられるマンゴー。
そんなことも知ってみると、マンゴーの味わいもまた少し違ってくるかもしれません。