「京都でバナナ栽培」おもしろそうだからやってみた〜バナナ農家 奈佐貴之さん × 蝶結び店主 杉下峻吾ー前編ー

「京都でバナナ栽培」おもしろそうだからやってみた〜バナナ農家 奈佐貴之さん × 蝶結び店主 杉下峻吾ー前編ー

蝶結びでは、京都府亀岡市で栽培された国産バナナ「京都 はんなりばなな」のお取り扱いを9月末にスタート。

「京都 はんなりばなな」お取り扱いスタート記念企画として「京都 はんなりばなな」を栽培する株式会社アグオル代表の奈佐貴之さんと、フルーツギフト専門店蝶結び店主杉下峻吾の対談記事をお届けします。

奈佐さんは建設会社から転身し、新規就農から2020年に独立起業。杉下もまた、2020年に独立しオンラインショップ「フルーツギフト専門店蝶結び」をスタート。

この共通点の多い二人が「フルーツとギフトの今と未来」について、ゆるくざっくばらんに熱く語り合います!

志は「日本の農業を一新したい」。建設業からの華麗なる転身

「京都 はんなりばなな」を栽培する、
代表奈佐貴之さん(右)、齋藤隆太さん(左)

ーーさっそくですが、奈佐さんの経歴が異色でおもしろいですね。なぜ新規就農の結果、バナナを選んだのでしょう?

奈佐さん:
はい、よく言われます(笑)。もともと親が経営している建設会社で働いていました。そろそろ僕も、何か自分でおもしろいこと始めたいなって思って、農業をはじめようと思いました。でも農業って「地味」「しんどい」「儲からない」イメージがまだあるじゃないですか。それなら僕が、「おしゃれで」「かっこよくて」「稼げる」農業にしたろやないかって決めたんですよ。

杉下:
それがすごいですよね。まったくの畑違いの建設業から農業にチャレンジするっていうのが。そこからどうやってバナナに行き着くのって不思議でならない(笑)

奈佐さん:
バナナ栽培は、知り合いからたまたま紹介してもらったんですよ。普通の野菜や果物だとありふれていて差別化がむずかしいけど、「バナナは誰もやっていないし、おもしろそう!」の直感だけで飛び込みましたね。やるからには無農薬で、というのははじめから決めていました。小さな子から年配の方まで幅広く食べてもらうバナナですからね。

事業当初は苦労が絶えない。でもスタート時期ならではのワクワクもある


ハウス3棟には、142本のバナナが植えられています。

ーー誰もやったことがないことをやってみよう!おもしろいことをやりたい、という情熱は、杉下さんも同じですね。

杉下:
この奈佐さんの「誰もやってないことをやってやろう!」っていう開拓者精神が似てるなって僕自身も思いました。国産シェアだと全体の0.2%やし、栽培や販売の相談をするにしても難しいですよね。はじめは失敗も多いしね。

奈佐さん:
そうそう、失敗といえば、1年目に水害に遭いましたよ(笑)。農園のある土地はもともとが田んぼだったんで水はけが悪くて。大雨でハウス内まで水が入ってしまって、水が全然引かない。排水が本当に大変でした。

杉下:
うわあ…心折れそうになるなあ…。でも「やるしかない」んですよね。

奈佐さん:
ははは、そうなんですよね。でもこの水害をきっかけに排水機能をしっかりと整備できたので、そこはよかったなと思ってます。

ーー水害を経て2年目にバナナが実ります。どんな気持ちでしたか?

奈佐さん:
はじめてからわかったんですけど、バナナ栽培って365日無休なんですよ。葉っぱが大きいので湿気がハウス内にたまるから、冬でもハウス天井を開放して風通しをする必要があって。水やりもバナナの味に影響してくるので、加減が難しくて。花がついて無事に房ができたときは、とてもうれしかったですね。

杉下:
さらには、25~27度以上の糖度の果実ができたというのも、うれしいですよね。甘さをウリにしている市販のバナナでもだいたい22度くらいやもんなあ…。数字にはっきり出ているのがすごいです。

奈佐さん:
個体差はあるので、全部が全部じゃないですけどね。でもこれまでの苦労が吹き飛びます。バナナが実ってようやくスタートが切れるって感じですね。

ロゴデザインには奥様も参加、パッケージは亀岡市の取り組みに賛同


筆記体のシンプルなロゴデザインが、パッケージをさりげなく引き立てます。

ーー名前も、パッケージも、シンプル&おしゃれで素敵ですね。

奈佐さん:
京都らしくて覚えやすい名前をつけたかったんです。「はんなり」のワードがいちばんに浮かびましたね。かわいらしい、上品という意味のおなじみの京都ことばなのでぴったりでした。

デザインは、シンプルでおしゃれなものにしようと、妻もいっしょになって考えてくれました。筆記体のロゴデザインは、実は妻が書いたものなんです。何回も何回も書き直していましたね。

あと、バナナを1本ずつ包んでいる包装紙は紙素材なんですが、これも意味があって。農園のある亀岡市は、プラスチック製のビニール袋は有料でも売ってくれないほど環境活動に前向きに取り組んでいるところなんですね。「SDGs未来都市」として、2021年に国からも選定されています。

なので「京都 はんなりばなな」の包装も、自然と紙パッケージに着地しました。

「食」を扱うからこそ、リアルなつながりを大切に

2年の年月を天塩にかけて育てたバナナ園を案内する、奈佐さんと齋藤さん

ーーところで、お二人の出会いは何がきっかけだったんでしょう?

杉下:
無農薬や自然食をテーマに活動している料理家さんのイベントで京都に縁のある出店者を募っていたときにはじめて、「京都 はんなりばなな」さんを知りました。実は「はんなりばなな」さんをこうやって訪れるのは、4回目くらいなんですよ。けっこう遊びにきてますよね(笑)

はじめは家族と来て、次は紹介するために誰かを連れてきたり。地元京都でこうやって生産者さんをつなげる一助になればいいな、広めていきたいなと思ってますね。

奈佐さん:
僕は、前職も建設業やし、食に関する業界がはじめてなんですね。で、特に食の業界は「人とのつながり」がとても大事やなと最近感じていて。杉下さんからもいろいろ紹介してもらってるんですけど。

飲食店さんとしても、食に関することなので、特に信頼とか信用とかは重要視していると思っていて。食材を扱う人は「信用できる人から紹介してもらった人は、信用して扱いたい」という部分があるんだなと実感しています。

杉下:
僕も経験したんですけど「ゼロから1をつくる」って難しいですよね。ひとりを紹介してもらうっていうのが、まず難関で。例えば、福知山市の小林ふぁ~むさん。「とまとのじゅ~す」という商品を紹介してもらって知り合って、農園におじゃまして、また小林さんが他の農家さんを僕に紹介してくれるっていう。逆に小林さんが「蝶結びさんがギフトとして販売してくれるよ」と紹介してくれたり。こんなふうに一つ目のつながりさえできれば、それを起点に自然に広がっていくので。

でも奈佐さんのバナナに関しては「まだ栽培中」という状態が難しかったんです。収穫できる状態であればすぐ広がるから。具体的には、スーパーで販売したり、ジュースにしてイベント販売したりして、お客さんにまず知っていただく。健康を気にしている人もそうだし。

まず1回目の接点をあれやこれやとみんなで協力してつくっていくことから、知名度やブランドは浸透していくものだと思うんですよね。

そして、新しく事業をはじめるいいところも苦しいことも、僕は知っているので。起業当時に僕がしてもらったことを奈佐さんに橋渡ししているっていう感じですね。

ーーそういえば起業当時の杉下さんの状況は、コロナ禍入ってすぐに加え、奥様が妊娠中でした。

奈佐さん:
そうなんですか。僕も「バナナをやる」と決めて動きはじめてから、結婚して子どもできてるんで、同じですね。応援してくれる妻には「ありがとう」しかないです。そういえば、子どもが生まれた年に、バナナを植えたんですよ。子どももバナナも1歳。たまたまですけど、一緒に成長を見守れるのがおもしろいしうれしいですね。

ーーギフトに限れば、奈佐さんは「バナナ」に特化。蝶結びは「フルーツ全般」。今後どんなふうに連携していこうと思ってしますか?

杉下:
福知山市小林ふぁ~むさんの「とまとのじゅ~す」もそうやけども、どっちもせっかく京都でやっているので、「京都らしさ」は全面にPRしていきたいと思っていますね。オフラインを大切にして、それをなるべくオンラインにつなげていくということは意識してやっていきたいですね。

ーー後編に続きます。


代表奈佐貴之さん(右)、蝶結び店主杉下(中央)、齋藤隆太さん(左)

▶後編はこちら「フルーツギフトの可能性とこれから」
https://www.retrospect.co.jp/blogs/secret/220928-2

「京都 はんなりばなな」販売ページ
https://www.retrospect.co.jp/products/hannari-banana